千恋☆ロマンス Ⅰ 【かなりの加筆修正により、若干ストーリーが変わります】








「東条君って前の学校でもモテてたでしょー?」


「え?まさか。」


「ふふ、謙遜しなくてもいーのに。」


「う……唐揚げ……」




はい、今の状況。



机をくっつけて班を作ったのだけど、私の隣には玲、向かいには梓、斜めには噂の転校生君。


隣では玲が寝言言うほどぐっすりすやすやだし、目の前ではピンクの空気咲き乱れてるこの案件、どうしてやろうか。

玲は取り敢えず、遅刻するほど寝てきたのにどうしてまだ眠いんだ!って感じだし、梓は東条君を女豹の目をしてがっちり狙うのやめましょうよ。


梓に、玲に、東条君。
それはそれはキラキラした御三方がいらっしゃるからね、この班、注目の的と化した。


うう、肩身が狭いよ……。



日本史は苦手じゃない。

というのも、カミウチとしての歴史を語る上で日本の歴史は必要不可欠。カミウチは日本の誕生と共に国家の裏側で“機密”として存在してきたから。

カミウチとしての勉強の段階で、教科書レベルよりかなり深い日本史を勉強してきている。

だからレポート制作は苦ではないんだけど……一人で書くのもつまらないし、一人で書くとうっかり“表沙汰”になっていない歴史の真実とか書いちゃいそうなんだよね。




周りを見渡して、うん、彼しかいない。

……玲を手伝わせよう。




『玲、起きて。』

「ん……。」

『れーいー。』



ゆさゆさと身体を揺する。

そうすれば突っ伏していた体勢を止めて、彼は背伸びをして。


「……何。」



不機嫌な玲が髪の毛の隙間から私を見てくる。





『手伝ってよ。』

「梓でもいいだろ。」

『玲でもいいじゃん。』

「何……永遠は俺がいいわけ……?」

『うん、玲がいい。』



イケメンと話している時の梓は梓じゃない。梓様だ。

ここで梓、もしくはイケメン東条君を手伝わせたらどうなる?

梓が不機嫌だととっても厄介なのです。

もれなくアイス奢る刑となるのです。




「…………貸して、それ。」



そうして玲はレポートを手伝ってくれた。



「あ……ごめんね二人共、手伝わなくて……」

途中で爽やか君な東条君が私達に気がついたようだ。


『玲が手伝ってくれるから大丈夫だよ。』


秒でそう返した。因みにこの訳は、梓が怖いからそのまま話してて!だ。



「ううん、そういう訳にはいかないよ。僕も班の一員なんだし、カミウチさん、手伝わせてよ。」


………。

今一瞬焦った。


カミウチなんて知ってるのは玲と梓しかいないから。

玲も梓も驚いたらしい。

玲はレポートから顔を上げ、梓の顔も一瞬固まった。



でも、これは彼の言い間違え。

だって知るはずがないでしょう。“普通の転校生”が。

気持ちを落ち着かせて、笑う。



『東条君、これね、ジンナイって読むの。今更だけど私、神内永遠子です。』

「うん、それは君の名前で、でも本当はカミウチさん……でしょ?」




挨拶のときのような爽やかスマイルでサラッと言い放つそれに、サッと血の気が引くのが分かった。