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「───という訳で、徳川家康は家督を徳川秀忠に譲って、江戸幕府の基盤を確実に築いていったと────」
五時間目は日本史だった。
結局お弁当を食べる時間は無く、疲労と空腹のままにぼうっと授業を受けている。
ちなみにさっきお弁当箱を持ち上げたところ、明らかに軽くなっていた。
きっと、眠そうな顔をしてる、お腹一杯の猫みたいに背伸びをしたあの男の胃袋にきっちり律子さんの卵焼きは収まってるんだろうなぁ。
許すまじ、玲さん。
「じゃあ、ここからは四人のグループを作ってレポートを作ることー。期限は今日の帰りまでだ。いいなー?」
授業はグループワークへと変わっていった。
ざわざわと、一緒に組もうだとか、レポートどうする?だとかの声が聞こえてくる。
「永遠、玲君、やろ。」
「……ん。」
『うん。』
私はいつものように、梓と玲とペアになった。
『あと一人か……。』
三人グループはこういう時に困る。
いつも一緒にいる私達に混ざるのは、きっと他の子からしてみても気まずくなるだろうしなぁ。
うちのクラスの人数は39人だった。
だから今までは3人の所がひとつ出来て、私たちがその枠にいたんだけれども……
転校生が来て40人……つまり4で割り切れちゃうから、あと一人絶対誘わなきゃいけない。
誰にしようかなぁ、とぼんやり教室を見ていたら、ふいに梓が動き出した。
軽い足取りだ。
何処にいくんだろうと思えば、
「東条くーん、一緒のチームになろー。」
『んなっ……』
───話しかけに行ったのはよりにもよって転校生。
女子達がそれぞれに東条君を誘おうと、お互いを牽制しあっていたからさぁ!絶対東条君は誘わないって決めてたんですけど!
梓がこてんと首を傾げて声を掛ける。
その動作があざと可愛すぎて、うずくまってる男子達が見えないかこんにゃろう。
そして女子達の目が死ぬ程笑ってないのが気のせいであってほしいよ……。
「僕でよければ。誘ってくれてありがとう。」
東条君は、女子達の梓に向ける怖い視線を知ってか知らずか、笑顔で頷いた。
ああ、なんか……面倒臭い事になりそうだなぁ……。

