「わああ、見て、梨音!雪っ!」


私より一足早く昇降口から外に出たこのみちゃんが上げたそんな嬉しそうな声に、急いで靴を履いて外に出た。


ドアをくぐった瞬間に吹き付けてきた、冷たい風。

はぁ、と息を吐けば、白く染まった。

そして、白い息とは別の白い結晶がちらちらと視界に入る。

小さな、小さな雪の結晶。


「本当!初雪だね」


思わず笑みが浮かぶ。


「ね!明日も降ってくれたら素敵だよね。クリスマスパーティーだし、ロマンティック!」


ふたりで歩き出しながら、このみちゃんは笑顔でそう言った。

このみちゃんの言葉に「そうだね」と返しながら、キュッと握る力を強めたのは、大事な楽譜が入ったバッグ。


……このみちゃんの言う「クリスマスパーティー」とは、毎年クリスマスイブに音楽科主催で行っている演奏会とパーティーのことだ。

普段はあまり普通科の生徒は音楽科の演奏に触れる機会がないので、年に一回、普通科にも音楽に触れてもらう機会として、パーティーと一緒に演奏会を設けているのだ。

音楽科の何人かがステージで演奏し、その後に料理やデザートが運ばれてきて、皆で食事を楽しむ、というもの。