気づかないうちに、円の名を叫んでいたらしい。

けれど、夢の内容など言えるわけがなかった。

あの夢は、何だか不吉すぎる。

今、この状況では正夢になってしまいそうだ。

「あたしは大丈夫だから、起こしてごめんなさい」

円は懐から札を出し構えると、何やら印を組み出した。

綺麗な指は、素早くしなやかに結界樹を繰り出して行く。

『三(散)』

円が作り出した結界は、札に込めて菖蒲に渡してくれた。