「菖蒲、大丈夫か?」


全ての物の怪を退けた円は、すぐさま菖蒲の所に駆けつけてくれる。



菖蒲が右手を抱えているの見て、勘のいい円はすぐに怪我のことに感づいてしまう。



「怪我をしたのだろう? 見せてみろ・・・」



「大丈夫だよ、ただのかすり傷なんだし心配しないで?」



「それはただの傷じゃない。物の怪にやられたんだ。いいから、手を出せ」



円の迫力に押され、おずおずと怪我をした右手の甲を円に預ける。



「今は薬など持ち歩いていないからな。 これで我慢してくれ。
言っておくが、俺は海のように回復は得意じゃないが・・・しないよりはマシだろう」



そういうと、小さくなにかを呟いた円は、菖蒲の手の甲に優しく口付ける。



「ちょっ・・・ 円っ!」



それは数秒の刹那の出来ことだったと思う。



けれど菖蒲にとってはものすごく長い時間に感じる。円が自分の手の甲に口付けていて、そこから伝わる熱量で菖蒲は卒倒しそうだった。