「ーーー……?」


もうどれくらい走ったかなど覚えていない。


円と共に息を切らしながら、段々と近づいてくる九尾の瘴気を辿る。


切り株や木の枝に足を何度も取られ、転びそうになる度に、円は優しく支えてくれる。


けれど、菖蒲の心は何処かざわついていた。なにか、不吉なことが起こりそうな気がしてならない。


鼓動が急に早くなる。警告音のように激しく息も出来なくなるくらいに……


「え?」


「どうした?」


「なんだか今…… 名前を呼ばれたような気がしたんだけど……」


確かではないが、誰かに名前を呼ばれたような気がした。


未だに鼓動は鳴り止むことはなく、うるさいくらいにざわついている。