「どこよ・・・どこにあるのっ!」


この屋敷の中にあるのはわかっている。


けれど見つからない。何度さがしても、どこを探してもみつからない。


「あれさえ見つかれば、全ては完成するのに・・・」


何のためにこの場所へ戻ってきたかわからない。


「・・・例のものは見つからないようですね。あのお方も何故このような回りくどいやり口を・・・
あなたが最高の依り代であろうと、今の主様なら自力でこの地上に落ちる事も出来ましょうに・・・」


感じる殺気だけでも命を奪われそうだ。


ひとしずくの汗が、滑り落ちる。下手なことを言えば、簡単に奪われてしまう。


「何のために私がここに戻ってきたと思っているの?
もうすぐよ。もうすぐでこの世界は終焉を迎えるわ」


「いいでしょう。この柊花(シュウカ)、この地上の人間と少し遊びたいと考えていたところなのです・・・」


鋭く伸びた爪を桜の喉元に突き付ける。少し押し込まれれば、赤い液体が滴り落ちる。


「ーーーーーっ」


「あなたがもっとも憎んでいる少女と遊ぶのも、一興と言うものでしょう・・・」


ニタリと笑うその表情に、全身に震えが走る。


「・・・・・・いいわ。多分、ここにあれがないのなら。あの子たちが隠しているんでしょうね。
あの子の弱点、教えてあげる。遊びたいのでしょう?」


「・・・あなたは本当に主様の依り代に相応しい・・・」


そのまま深く口づけを落とされる。


虫唾か走る。けれどもこんな事で根をあげていては、何のために生きているのかわからない。


桜はただ、拳を握り耐えるしかなかった。