「菖蒲?菖蒲なのか?」


「円・・・」


「・・・帰ってくる頃だと思っていた。ここでは少し冷えるだろう。中に入れ」


「ううん、ここでいいよ。初めて円に会った、この場所で」


一瞬、視線が交差する。けれどもすぐに逸らされる。お互い、心に抱えているものを読み取られまいとする、本人達も気づかない行動だった。