これは夢だ。何度も見た悪夢。

あの日以来、記憶に残ることはなかったが毎夜見ていたのだろう。

九尾の鋭い爪が菖蒲の喉元目掛けて振り下ろされる・・・

いつも、夢はそこで終わるのだ。

目覚めは悪く、身体の力が抜けて行く感覚が菖蒲を襲う。

「あたし・・・どうしちゃったんだろう・・・」

それから、毎夜はっきりとその夢を見る。助けを求めるけれど、世界の破滅は止められない。

懐に忍ばせていた円からもらったお札を握りしめる。これがあれば、不安という感情から救ってくれるような気がして・・・