ようやく正気を取り戻したとき、少年はたくさんの死体の上に、一人立っていました。

さっきまで、レイを殺せ殺せと、はやしたてていた村の人達が、真っ赤な世界に、何体も横たわっています。

しかし、その中に、かつての仲間達、レイを裏切ったラウール達の死体を見つけることは出来ませんでした。

それでも、少年の表情はとても晴れやかでした。

死体の山を見て、自分の力の使い方をようやく理解できたような気分でした。


――僕はこの腐った世界を変えるために生まれてきた。

そう強く、少年は思いました。



静まり返った広場に、少年の不気味な笑い声が響き渡ります。



リズ…


蚊の鳴くような声が、少年の名を呼びました。

振り向けば、処刑台の上に、少年に怯えるレイの姿を見つけました。

カタカタと肩を震え上がらせ、見開いた瞳に涙が光っています。



――僕は一体どれほど残虐な殺人劇を、レイの瞳に焼きつけたのだろう。

ほんの少しだけ、少年は後悔しました。



死体の山を降りて、少年はレイのもとへと歩き出しました。

近づく少年に、レイは腰を抜かしたように、その場にへたりと座り込みます。