スイカズラは忍冬(にんとう)とも言う。
寒い冬も枯れることなく耐え忍ぶからだ。


直樹も悩みながら成長してきた。
だから自然と自分に重ねてしまうのだった。


そして今、最高の舞台に直樹はいた。

美紀を甲子園に、大阪に連れて行くために直樹は集中しようとしていた。


「美紀!」

直樹はありったけの力を込めてスイングした。


「ワーーーー!」

歓声が球場全体を包み込んだ。

直樹は一瞬、我を忘れていた。

慌てて見上げると打球はスタンドに吸い込まれた後だった。




 逆転満塁サヨナラホームラン。

劇的な幕切れだった。

凄まじい歓声と共にダイヤモンドを一周する直樹。
何が何だか判らず戸惑っていた。

「直樹ー!」
秀樹が抱きついてくる。

「スゲー! 直ー! 凄過ぎるぞ!」

大も泣きながら直樹を迎える。

直樹はもみくちゃになりながら、初めて野球を続けていて良かったと思った。

「甲子園だー!」
直樹が雄叫びを上げる。

感情を大爆発させて喜ぶ直樹。

こんな激しい直樹を今まで見たことがなかった。

スタンドで観戦していた正樹も体を震わせて泣いていた。




 地元の新聞・メディアの取材を受ける直樹。

いつも秀樹の引き立て役だった直樹。

いきなり主役になり戸惑いを隠せない。

主役の座を奪われた秀樹も、功績を認めざるを得なかった。


「直ニイありがとう」
美紀は直樹の頬にキスをする。
照れて俯く直樹。


「よーし! 今度は俺が主役だー!」
秀樹が叫ぶ。


「違う俺だー!」
大も叫ぶ。


「よーし! 三人で競争だー! 今度は甲子園で勝負だ!」

恋のバトルは益々激しくヒートアップしていく様相をていしていた。