「綾子、目が腫れちゃうからっ…。」


「えへへ。」


ただただ、嬉しくて、幸せな気持ちでいっぱいになって……。

ヘアメイクさんが手渡してくれたティッシュで、私たちは涙を押さえながら、笑い合った。


「ブーケとヘッドドレス、持ってきたよ。

和装の時はね、お着物があんまり素敵だったから、お花も負けないように大振りにしてみたんだ。」


「きゃー!!素敵!!」


でしょ、でしょ。

綾子の打ち掛けを見て、すっごい悩んだんだよ。

ありきたりの和飾りじゃ、つまんないし。

クラッシックな中にモダンを取り入れるような感じで、白いカサブランカと真っ赤なダリアで、花かんざしを作ってみたんだ。

そして、ドレスの時には、逆に色遣いを押さえてみたの。

真っ白な芍薬と羽根のアンサンブルが、シンプルなのにゴージャスで華やかに映えるでしょ。


「ありがとう、本当に素敵…。」


良かった―――。

綾子の嬉しそうな顔が見れて、私はホッと安堵する。


「じゃあ、私はこのまま行くから。」


バイバイと手を振って、扉に手をかけた時。


「待って、―――。」


振り返った私の瞳に映るのは、真剣な表情で私を見つめる、綾子の眼差し。


「多分、―――。

10時過ぎに来るよ、渡瀬さん。」


――――!!