現実を生きたからこそ、夢を見る



「壊れたらいつでも『おいで』。永遠の休息を共にしよう」


なんて甘美な言葉なのだろう。だからこそ、現実を嫌ってしまうのに。


「そうすればあなたは、ずっと泣き続けるのか……」


私が壊れた責任を涙で贖罪し続ける。


今のように。己の喉元にナイフを突き立てて。


「……!」


待ってとも言えない。横たわる“彼”を抱き上げる前に、消えてしまった。


「どうし、て……」


言いながら、“彼”の涙と同じだと悟る。


愛している人に傷ついてほしくない。ああ、だから“彼”はあんなことを。


「そうして、優しい君を見越してのことだろうね。他人が傷つくならば、もう己を傷つける気も失せると――なかなか殊勝な“彼”(夢)ではないか」