もっと傷つけたい。誰からも愛されない体を傷つけ、落ち着きたい。


ナイフの中に落ちる、一本のカッター。衝動的に手に取ろうとしたが、“彼”に右手を握られた。


「自分で自分を傷つけるのは、何よりも悲しいことだから」


“俺がやるよ”、と言う彼。


傷のつけすぎで固くなった皮膚。ぐっ、と持つ手に力を入れた“彼”は――


「あちらで愛されていないと思わないでほしい。俺ほど君を愛している奴はいないけど、君がこんなことをして喜ぶ奴なんか一人もいないよ」


「――」


詰まっていた胸から、込み上げる。


鼻筋から眼球まで上り、視界をぼかした。“彼”と同じ顔だ。