現実を生きたからこそ、夢を見る



星が明滅していく。


この夢も終わりかと、空を見上げた。


「右回りの足場を、また進んで来るよ」


縄も外さずに。
外そうにも、自覚(みえ)ないから――


「落ちたら踏み誤って、乗り直せない」


誰かが泣くぐらいなら、私が泣く結末を。


いや、そもそも、泣きたくなる自覚さえも湧かない。


「“彼”が消えないのもまた、“そんな君”が在るからこそだろうな」


薄れていく世界。
最後に、両手を伸ばす。


握られた。
右手でなく左手を。

奴に温もりなんかない。だというのに――