ナイフは消え、あるのは星空と斜め上の奴。
「どこからが私の夢で、どこまでがお前の演出なのか、分からないな」
流した涙は戻せない。“彼”に握られた右手を抱いた。
「境界線は君に引かせよう。私はどちらにでも存在する」
「悪趣味な見透かし(覗き魔)だな」
左腕の傷も、あるべき痕に戻った。平静も取り戻せているが、“彼”に出会えた事実は消えることない。
「嬉しい、かね。私に出会えた以上に」
「嬉しいよ。会いたかった」
どんな形でも――とは言えない。
「泣いていた」
そう――
「泣いて、いた」
私のせいで。
「それは、何も“彼”(夢の中)だけではあるまいに」


