最低で構わないから~好きと言えずに時間は流れる~

「ま、まぁ…;;」



鞄から財布を出しながら頷き、成美に目配せ。

私には、1人でここを去る勇気がない。



「行こっか」



私の気持ちを読み取ってくれた成美も立ち上がる。



「井ノ原さんの第一印象って、誰ですか…?」



「普通に香椎さんでしょ」



なのに、芽が小声で問い掛けた質問のに対する井ノ原さんの回答に固まる。

“普通に香椎さん”……それはわかる。

わかるのに、何で動けないの…?