最低で構わないから~好きと言えずに時間は流れる~

「俺が仕事行ってる間に、印鑑持ち出して、誰かに書かせたんやろうな」



「そんな……!」



「知らされた時に離婚届の提出も考えたんや。ただ、記録として残るやんか。そんなん嫌やろ?せやから、婚姻取消しに向けて話し合いを始めた」



彼女ではなく、今は戸籍上では奥さんとなった晴香さんは、どうしてそんなに舜へ執着してるのか。

「時間が掛かるかも知れん」と言う彼の手を、私はそっと握った。