「佐由美……」



目尻、頬、唇と、順にキスした井ノ原さんは、優しい瞳をして、私の名前を呼んだ。

首に顔を埋めた彼。

狭い部屋には、私の吐息が響き渡った。

――神様。

今夜だけは、どうか私たちを許して下さい。

恋人でも、夫婦でもない2人だけど。

確かに、愛は存在していたと思います。

罪悪感がないと言えば嘘。

でも、好きな気持ちに嘘はつけない。

彼と一緒に居る幸せという実感が、欲しかったのです。