「えっ」
何故、突然?
私が自分のお母さんの事を、話したか、ら……?

千景ちゃんから聞いて無かったら、もっと焦って取り乱していたかもしれない。


「ただ、その頃の記憶が無くて……。身寄りの無かった僕を引き取ってくれた千景さんのお婆さんにも、無理に思い出すのを禁止されてるんですよね……」
手持ち無沙汰からか、指を絡めながらお兄さんは言う。

「慌てなくて大丈夫って事、ですよね……。
お兄さんにも、『お袋の味』きっとありますよ」

過去の出来事や環境が、こんなにも、優しいお兄さんを形成しているのだとしたら、
暖かくて、優しい過去に包まれていて欲しいから。


「ありがとう。みかどちゃん」
ああ……、とっても優しい笑顔。
可愛いなぁ、お兄さん……。



「何故ですかね、僕、みかどちゃんの笑顔が見たくて、
試作品のふりして、みかどちゃんの好きな物を作ってしまいました」
「え」

「みかどちゃん、苺が好きだって千景さんに聞いたんですよ」
え、あ、そういえば、千景ちゃんとそんなメールしたかも。


「この前の、メールを勝手に見たお詫びという事で、ね」

お兄さんのウインクも……、お茶目で可愛いなぁ。