一口飲んだら、口の中に苺の甘酸っぱさが香り、すぐに甘い蜂蜜が喉を通り抜ける。
――とても美味しい。
「新メニューにどうでしょうか? チーズケーキやパンに合わせようと思ってるのですが……」
なる程、試作品の味見だったんだ。
「凄く良いと思います。
よく母が作ってくれてた苺ミルクセーキを思い出しました」
私がそう言うと、レモンタルトを差し出していたお兄さんの手が止まった。
「『お袋の味』という物ですか。……素敵なお母さんですね」
「はい。私が小さい時に亡くなったんですが、お菓子やケーキがとても上手だったんです」
そう言うと、少しお兄さんの瞳が陰り、気まずそうに微笑む。
「あの、でも、私は平気ですよ? 2人目のお母さんは、優しかったし皇汰と分け隔てなく可愛がってくれたし」
問題は3番目の今の義母ぐらいだしね。
するとちょっぴり安心そうにしたお兄さんが、レモンタルトを切り分けてくれた。
さっぱりとして、甘くないから、苺ミルクセーキと相性抜群です。
「僕の母も、事故で亡くなっているんですよね」



