「お兄さん、楽しいですか? ねずみ花火」
私がそう尋ねると、ふるふると首を振りました。
「いえ。けれど、初めて見ました」
そう言って、夢中になるお兄さんは可愛いです。
「お兄さん、私が手紙に書いた内容、覚えていますか?」
先ほど、ボロボロになっていた手紙を見たので、覚えているとは思うのですが。
「はい。ホットケーキですよね。お父さんの味を伝授して貰いましたよ。ホットケーキミックスなんて使いませんから」
そう、少しだけ強気に笑ってくれました。
「俺は横で、バターを作ってやるよ。
カクテルみたいに格好良く、な」
ちょっぴり対抗意識を燃やした岳理さんが、そう言いました。
でも、岳理さんなら確かに格好良く作ってしまいそうです。
「あの、でも明日はちょっと用事がありまして……」
お兄さんは申し訳なさそうに言うと、岳理さんの目つきが鋭くなりました。
「――何?」
野生のカン、なのでしょうか。
お兄さんも苦笑いを浮かべました。
「姉に会いに行こうかと」



