「どっちをだよ?」

二階の通路で煙草を蒸かしながら、岳理さんは千景ちゃんに聞きました。



「両方よっ」

ふふんと笑った千景ちゃんは、私とお兄さんの腕に飛びつきました。


「ほら、早く花火するわよ」

う、うらやましいぐらい胸の感触が腕に絡みつきます。

いいなー……。


「千景さんと岳理くんはどの花火が好きですか?」

のんびり下へ降りながら、お兄さんは聞きました。


「私は、色が変わっていく奴!」
「あ、一緒です!」

「可愛いよねー」

私たちが盛り上がる横で、岳理さんはフッと馬鹿にしたように笑った気がしました。


「俺は、仕掛け花火かな。
今度、用意してやるよ」

が、岳理さんがそう言うと、本当に用意しそうだから、怖いです。




「来た来た! 姉ちゃん、チャッカマンをどこまで探しに行ってたん?」

やや不満げに皇汰は言うと、すぐに私の手から奪い取り、地面に置いた蝋燭に火を点けました。

また、ロケット花火も再開されました。


お兄さんは、夢中でねずみ花火をじーっと見つめていました。