202号室の、お兄さん☆【完】

「……はい。――はい!
今、僕は、とても満たされていて、少しずつ『愛情』をお勉強中です」

「ふふ。是非とも、次はお父さまも日本に連れて来て欲しいです」

「え、ええ!? 自我共に認める変態ですよ!?」

あたふたするお兄さんに、ついクスッと笑ってしまいました。

「個性的な方は、花忘荘の皆様で少し免疫がつきましたよ」

「……なるほど。 じゃあ連れて来れば良かったですね」

そう言ったお兄さんは、突然思い出したかの様に、鞄から手紙を取り出しました。


「見て下さい。みかどちゃんからの手紙、読みすぎてボロボロになってしまいました」

それは、私が2回送ったお兄さん宛の手紙でした。
初めてのエアメールにとても緊張して、何度も何度も書き直した、あの手紙。



「みかどちゃんからの手紙、すごく嬉しかったんですが、ほら、僕って弱いじゃないですか?
みかどちゃんを失う怖さや不安にも、時々襲われて、何度もお父さんを困らせましたよ」

苦笑しながら、淡いキャンドルの火で手紙を眺めるお兄さんは、綺麗で……儚く消えてしまいそうな影を伸ばしていました。



「わ、私のお兄さんへの愛は、簡単に消えませんし、私は簡単に死にませんからね」