ポツリ、ポツリと、
会えなかった時間を、ゆっくり言葉で埋めて行きます。
窓の外が色鮮やかに光る、この部屋で。
「最初は、お父さんに会うのが凄く嬉しくて怖くて、とても緊張しました。
なのに、いざ会ったら、子どもみたいに無邪気な方で、緊張するのが馬鹿らしくて……」
そう、楽しそうに話すお兄さんを見ると、とても安心できました。
「『好かれたいからと顔色を窺うのは止めなさい。君がいくら私を憎もうが、恨もうが、私はただ君が愛しいだけだから』と。全身で愛情をぶつけて来たので、とても戸惑いました。
ああ、僕は人の愛し方も知らないんだなぁって。
みかどちゃんの気持ちを、僕は理解、してなかったんだなぁって。
毎日、反省ばかりでしたよ」
「……お兄さん」
「料理を教えてくださる時は格好良いし、厳しいし尊敬できるのに、家に戻ると友達みたいな感覚で接してくるから、なかなか距離も分からないし、本当にお父さんは掴めない人です」
そう言いながらも、顔はとろけたままのお兄さんは、凄く楽しそうです。
「でも、満たされてるんですね。
お兄さんから感じられた余裕は、お父さまのお陰なんですね」



