202号室の、お兄さん☆【完】

「あ、アロマキャンドル、良い香りですね」

お兄さんは落ち着いた表情で、テーブル上のキャンドルの香りを嗅ぎました。




「こんなに真っ暗なのに、昔とは状況は違うから平気ですよ」

そう言って、隣をポンポンと叩くので私も座ってアロマキャンドルの香りを嗅ぎました。



「あの時は、鍵は開けようと思えば開けれました。助けを呼ぼうとすれば、きっと誰か気づいてくれました。

今は、自分から開けれないし、助けを呼べません。

けれど、」


そう言って、ニコッと優しく笑いました。




「けれど、みかどちゃんが隣にいます」

だから、何も怖くない、と言いました。


今宵の月のように穏やかで、
優しい淡い光のように。





「お兄さん……」

ちょっぴり髪が伸びても、
血色が良くなり、成長していても、

お兄さんは、優しい優しい、月のような穏やかな人のままでした。



「……NYの生活は、楽しいですか?」

外は、花火や皆さんの賑やかな声で溢れています。


だから、202号室で監禁中の今だけは、



お兄さんは私だけの、お兄さん、です。




「楽しいし、驚きの連続ですし、
みかどちゃんを忘れた日は一度もありませんでしたよ」