お兄さんの部屋の前には、畳まれたテントが置いてありビクともしません。
なので、私の部屋の、あの穴から入る事になったのですが、
「お、お兄さん……?」
お兄さんは、私の浴衣の裾をちょこんと持ち、にこにこ笑って、か、可愛らしいです。
「いえ。浴衣姿のみかどちゃん、可愛いなぁって」
か……?
可愛いのはお兄さんです!!
「み、見て下さい! お兄さん! 壊した壁の穴、トンネルみたいでしょ?」
耐震性に優れたコンクリートの壁になりましたが、壊れた穴だけは、周りをピンクのプラスチックで舗装し、通り抜けができるようになっています。
お兄さんは目をパッと輝かせ、裾から手を離すと、すぐにトンネルをくぐりました。
くぐり抜けるお尻まで可愛いです。
私もアルジャーノンを窓辺からテーブルに移し、予備のチャッカマンを持って、トンネルをくぐり抜けました。
「お邪魔します」
「あ、みかどちゃん、電気が点きません」
お兄さんは、スイッチをカチカチしていますが……、電球が取り外されている事に気づいていませんでした。
「アロマキャンドルのお土産がありましたよね。あれに火を……」
そう言った瞬間、
ガラガラ、ドサッ
と、私の部屋から何かが落ちる音がしました。



