ザーッ カシャ カシャ カシャ
岳理さんが洗ったお皿を受け取り拭きながら、小窓から縁側で騒ぐ皆さんを見ていました。
甚平の片腕を脱ぎ、どこから出したのか扇子を持ち、舞うドラガンさん。
ドラガンさんの好きな『敦盛』は、かの有名な信長が本能寺で最期に舞ったとされています。
喋らないドラガンさんは、艶めいていて本当に王子様のようです。
その横で真似してたどたどしく踊るお兄さんも、綺麗な色気がありました。
「みかども行ってくれば良いのに」
岳理さんは独り言のように呟きました。
「今日は、
――少し岳理さんが遠くに感じます」
そう言うと、水を止めて一緒にお皿を拭き始めました。
「隣に居た事とかあるワケ?」
「い、いつもより遠い気がするんです!」
「俺には、みかども鳴海も望んでいる距離よりは遠いよ」
そう言って、嘆息すると、乾いているお皿を戸棚に片付け始めました。
「な、何か……悩み事とかあるのなら、教えて欲しいです」
拭いたお皿を乾かし並べながら、お互い目は窓の方へ向いたまま、そうお願いしてみました。
長く短い沈黙の後、岳理さんは頭に被っていたナプキンを取りました。



