「ももももしかして、風邪を引いたのでは!?」

あんな冷たい石の階段に長時間座っていたから……。


「そん時は、みかどが看病に来ればいいだけだろ」

車に乗り込むと、なかなかの荒さでアクセルを踏み、涼しい顔で言われました。

……どうかどうか、風邪を引きませんように。


だって、車の中でさえこんなに無言で息苦しいんだもん。

看病なんて、とてもじゃないですが無理です。

よくよく考えたら、捕まえる為とはいえ、私……岳理さんに抱き締められ……た?


「!!!!!」

「――何1人で暴れてんだよ」
迷惑そうに岳理さんが此方を見ました。重ね重ね恥ずかしいです。



「そんなんじゃ、甘ったれた姫さん助けられねーぞ」

「姫さん?」

「202号室に閉じ込められた能天気な姫さんだよ」

あはは……。そんな緊張感も無しに。


「姫さん助けるんだから、みかどは王子様だな」

「私がですか?」

そんな凛々しい王子様には、到底なれそうにないですが、やはりお兄さんをあの部屋から出したいのなら、王子様になりきらなきゃいけないんですね。



「で、今日は俺の所までおめかしして来てくれたシンデレラな」
クッと馬鹿にした様に笑われる。

――孔礼寺まで迷って歩きまくったから、髪はボサボサ、靴は泥だらけ、泣いた目は真っ赤。そんな姿のシンデレラなんて居ないと思いますがね。