「岳リン、探偵の依頼来てたよ」
「どんな?」
岳理さんが、鍵と煙草をポケットに仕舞い、上着を羽織りながら言いました。
というか、探偵も本当にしてたんだ……。
「迷子の猫を探して欲しいって。OKしといた」
「勝手にOKすんなよ! ったく猫探ししか来ねーし」
「犬の散歩とかも依頼来てたよ」
「俺は何でも屋じゃねーよ」
漫才のようなやり取りをボーっと見ていたら、用意が整った岳理さんにまたもや腕を捕まえられてしまいました。
「行くぞ」
「あの、」
「却下だ」
お、横暴だ! この人やっぱり優しくありません!!
「いってら~」
のんびりと手を降る住職さんを背に、私は岳理さんに引きずられる様に階段を下りて行きます。
熱い腕は、岳理さんの体温が伝わってきたから。
どうして……だろう。
捕まえられた腕を、離して欲しくないなんて。
何でこんなに、
胸が苦しいんだろう。
岳理さんの背中は、大きくてすぐそばにあって、ドキドキが伝わらないか、ビクビクしてしまいます。甘酸っぱい気持ちが広がってしまいます。
速く速く車に乗り込まなければ。
クシュン
……クシュン?



