は、話も済んだし、そろそろこの状況を何とかしたいのですが……。

「あ、の」

「却下だ」

「!? まだ何も言ってません!」

微かに、岳理さんの腕に力が入った気がします。


「お前、俺が連絡無視されて、どんだけ苛々したと思ってるんだ」
心配じゃなくて、苛々って所が岳理さんらしい。


「1人で悩まずに周りに頼れって言ったのに、この馬鹿っ」

「ひ、酷いっ」


「鳴海の事は、俺も考えてみるから今日はとにかくもう帰るぞ」

「……はい」

やっと離されたと思ったら、腕を掴まれて立ち上がらされました。

「車出すから着いてこい」

「ここで待ってま」

「着 い て こ い」

「はい」


こうしてなんちゃってシンデレラは、お城ではなくお寺から逃げ出したものの、またお寺に戻る事になりました。




「あー、やっぱり侵入者だったんだね」

縁側に、岳理さんのお父さんでもある住職さんがのんびり座って寛いでいました。


「クソジジイ、鐘鳴らしたろ?」

「だって、岳リン気づいてないかもって思ってさ」


「俺の管理してるセキュリティを甘くみんな」

そう言うと、まだ少し濡れている髪をかきあげて舌打ちをしました。


――いつもの岳理さんです。