何故、今このタイミングで……。
いや、トールさんは悪くない、それは分かってるけど。
「千景ちゃんから、誘惑できるぐらい綺麗にしてやってって言われたけど、このままでも俺はいちころなのにな」
体温が下がると同時に、私はお兄さんを見上げたけれど、お兄さんは急いで逸らすとキッチンへ入っていった。
あ、ああー……。
どうしょう。
迷惑メールだからと着信拒否して貰い、尚且つ心配して何か力になりたいと言ってくれた、のに。
たとえ、その感情に特別なモノなんでなくても。
たとえ、メールを見た罪悪感から、力になりたいと言ってくれていたとしても。
たとえ、私に危険が迫っても土日なら助けてくれないとしても。
私は、今、優しいお兄さんの気持ちを、蔑ろにしたんだ。
内緒で、あんなメールの人とデートするって思われたんだ。
ズルくて、なんて酷い嘘つきなんだろう。私。
「どうしたの? 岳リンとデートなんでしょ?」
何故そこまで―……。
「つまり、鳴海んの為なんだろ?」
「えっ」



