「タイミングが難しくて、ちょっと気まずい雰囲気になってしまったのですが……」

なる程、さっき私もちょっと意識してしまってたから、お互い軽い無言になってしまったんだね……。

安心して、へらへらと口元を間抜けに歪ませて笑ったら、お兄さんはクスクス笑ってくれた。
そし、て、
お兄さんは、極上に、甘くとろけるように笑った。

「確かに、女の子って可愛くてズルいですね」


「あまーい! 甘いあまーい!!!」


パンパンと右上で両手で叩きながら、トールさんが登場した。

「トールさん!!」

「あー甘い甘い。マスター、とびっきり苦い珈琲、頂戴。天然ヤローに胸焼けしちゃって」


「……スッゴく渋くて苦いヤツですね」
お兄さんが、茹でタコのように首まで真っ赤にしてキッチンへ向かう。


「俺も、みかどちゃんの隣にすーわろっと」

そう言って、隣の椅子を引き、長い脚を組む。
そして、私の顔を覗き込んだ。


「そういや、みかどちゃん、早速、日曜日メイクしてあげるよ」
「え」

ナイスタイミングでお兄さんがキッチンから珈琲を持ってきた。



「だって、『デート』するんでしょ?
千景ちゃんから聞いたよ」

えっ


ええー!?