とりあえず、自分の感情を抑えるのに精一杯で気の効いた言葉の一つや二つも出てこない。
「……ごめんなさいっ」
うなだれて謝る羽音とは後ろ向きに座った。
まずはー……
俺は羽音に嘘つかれてたのか?
友達の家なのに、なんで兄ちゃんが登場すんの?
「お前さ……俺に嘘ついた?」
「ごめんなさいっ……もう、涼雅を傷付けたくなかった……」
「嘘つかれる方が傷付くんだけどな…」
自分の茶色く傷んだ髪をくしゃっとする。
ここで羽音を責めたらまた振り出しに戻るだけだ。
俺が大人になんなきゃな。
「なんで家行ってた?」
「数学教えてもらってたの……。これはほんとだよ!」
「疑ってねぇから。で、キスされたんだ」
「帰りの車で……」
また涙が羽音のキレイな瞳を濡らす。
羽音が泣いたら俺まで辛くなるんだよ………。

