【涼雅side】
夜の9時過ぎに羽音が帰って来た。
それも、ボケーっとして抜け殻みたいになって。
どっからどう見ても何かあった感じ。
「おい、羽音……どした?何かされたの?」
俺の言葉を無視して、いきなり部屋に入って来るなり泣き崩れる。
久しぶりに入って来たら泣くって……俺どうしたらいい?
「なんで泣いてんだよ?……俺に言ってみ?」
「んっ……ふえっ…」
「泣いてちゃ分かんねーだろ」
背中を撫でるとビクッと身体を大きく反応させる。
そこまで、びっくりされるとちょっと傷付く……。
しばらく俺が背中を撫でてると、嗚咽とともに絞り出すように言った言葉。
「裕紀くんにっ……キ、キス……された……」
「……は?」
「裕紀くんにキス………されたの……」
目頭を赤くして言う羽音の言葉が信じられない。
ってゆうか信じたくない。

