「楽しかった?兄ちゃんとのデート」
「別にデートじゃないもん。ケーキ奢ってもらっただけ」
冷めた顔付きで、勉強道具を机に拡げる羽音。
俺も俺で、言いたいこととは逆の言葉を羽音に投げ付けてしまう。
バカバカバカーー………
ブーッ、ブーッ、ブーッ………羽音のケータイが机の上で震える。
「誰?」
「誰でもいいじゃん……」
「いいから」
「……裕紀くん…。涼雅はさっ……裕紀くんのこと嫌いなの?」
嫌いも何もそんな切なそう目で見られたら、何も言えなくなんじゃん……。
羽音の悲しい潤んだ目を逸らして最後に一言言い放つ。
「………アイツんとこいっちまえ」

