俺様の熟した恋の実~10years~




そんなのあたしには考えられないよ……。


転校しちゃったら、涼雅と離れて会えなくなっちゃうんだよ。


ママは大切な人の側にいられるかもしれないけど、あたしは大切な人と離ればなれになる。


そんなの……嫌…。


「あたし……ここに残るよ」

「やっぱり嫌?新しいお父さんは?」

「それは嫌じゃない。ママが選んだ人だもん。ここを離れるのが嫌なだけ」

「そっか……。でも…明後日新しいお父さんに会ってくれないかな?」


申し訳なさそうに笑ったママにあたしは頷いた。


ママが選んだ大切な人だから迷惑はかけたくない……


でも、あたしはここに残りたいの。



「………それだけだから…。いきなり話してごめんね羽音!」

「ううん。大丈夫。明後日予定空けとくからね」

「ありがとう。また明日にでも場所指定するわね」


さっきとは違って、顔が明るくなったママ。


この状況を受け入れるのが精一杯のあたしと違って、すぐパソコンに向かい仕事を始める。


大人って……こんななんだ…。