ふと、ベランダに出て夜空を見ていたあたしを呼ぶ、聞くだけでため息がもれてしまいそうな、低くて滑らかな美しい声。 夏の生ぬるい風をまといながら振り向くと、 優しく抱きしめられた。 伝わる温もりと、鼓動の心地よさ。 「……流(ながれ)?」 あたしは少し身をよじって、 大好きな彼の名前を呼ぶ。 すると身体が離れ、 彼があたしの顔を見つめた。