ただ、名前を呼んで


内藤さんは頑なな表情を見せた。そして彼の従順な妻はそっと寄り添う。


「なぜ急に?長い間彼女はここに居たのに。」


祖父が聞くと内藤さんは僕に視線を向けた。

条件反射のようにピクリと肩を震わせる僕に気付いてか、内藤さんは視線を外す。


「私達は、拓郎くんが憎い。そしてあなたも、その子も。」


内藤さんに憎しみの眼で見られた事はあったけれど、面と向かって『憎い』と言われたのは初めてだ。

少し動揺する僕の隣で、祖父は冷静だった。