ただ、名前を呼んで

ロビーは割りと広さもあり、綺麗に掃除されている。

周囲はシンと張り詰めたように静寂を守っている。

病院のロビーよりも温かみがあり、ホテルのロビーよりも簡素。

内藤さん夫妻と僕と祖父は向かい合うようにソファーに腰を沈める。


「さっきの続きですが、やはりカスミさんを連れて行かれるおつもりですか?」


祖父の言葉が穏やかに響く。内藤さんはチラリとこちらを見ると軽く咳ばらいをした。


「えぇ。カスミが良くなって来ている以上、ここには置いておけない。」