ただ、名前を呼んで


だけど逃げてばかりではいけないんだ。

祖父が止めるのも聞かず、毎日毎日通ってきた。

どんな僅かな可能性も信じるって、そう決めたのは自分自身だったのだから。


足枷が繋がれているかのように重たい足を引きずり、門の前に立つ。

窓からの光に照らされた母の緩い目元を思い描くと、心を強く持てる。

母のその目元が僕に笑いかけるのを想像しながら、僕は施設の門をくぐった。