僕はよたよたと母に近付き、視線を遮るように窓のそばに立つ。

母の目の中に、確かに僕の姿を確認する。

だけど母はまるで遠くを見るような目をしていたので、なんだかとても、とても悲しかった。


「お母さん。」


その遠い瞳に向かって僕はぽつりと呟く。


「僕は、拓海。」


母はフイと顔を逸らすと、天井を見上げた。

窓の外には興味を失ったのか、僕が視界に居るのが嫌だったのか……。


「お母さん……。」


母は僕を見てくれない。
僕の声に答えてくれない。

おぼつかない足を引きずるように、僕は部屋を後にした。