ただ、名前を呼んで


どれくらい時間が経っただろう。
戻って来た祖父は、一体どうしたのかホコリまみれだった。


「これをお前にやる。」


ホコリまみれの祖父が差し出したのは、一本のビデオテープ。


「何、これ?」

「拓郎が撮ったカスミさんの映像だ。私は一度だけ観て、物置の奥に片付けてしまっていたんだ。」


僕はそれをゆっくりと受けとり、まじまじと眺める。
この中には、どんな母が居るのだろうか?


「観る、観ないはお前の自由だ。しかし私は観るべきだと思う。」


そう言って祖父はまた部屋から出て行った。