ただ、名前を呼んで


祖父は落ち着いた声で話す。
ざわめきそうな僕の心を撫でるように。


「悔しいんだな、拓海。」


悔しい……
駄々をこねる子供みたいで嫌だけど、否定しきれない気持ち。

僕はゆらゆらさせていた両足を引いて腕に収めると、立てた膝に額をうずめる。

そして静かに呟いた。


「くやしいよ……。」


祖父は僕の頭をその温かい手の平でぽんと叩いた。


悔しい。

だって僕は父に似てるはずでしょう?
だったらなんで僕じゃダメなの?

なぜ母は父のことばかりなの?