「ちょっと!華羅お姉ちゃ…」
皆が気を遣ってくれたのは嬉しかった。
でも、なんだか照れくさくて思わず空気を変えたくなったんだ。
それを止めたのは、他でもない弥先輩で。
「絵恋、私は少し遅くなると伝えるのを忘れないで下さい。
聖也さん、華羅、良いお年を。」
弥先輩の言葉に、3人が手を振り、程なくしてその場からいなくなる。
「やっと二人になれたね。」
弥先輩がそう言って、あたしを後ろから抱き締める。
「弥先輩…」
「声かけれなくてごめんね。
本当はパーティーが始まってすぐに沙羅ちゃんを見つけたけど、来賓への挨拶が終わらなくて。
本当はずっと一緒にいたかったんだけど、なかなかそういうわけにもいかなくて。」
「そんな…気にしないで下さい。
あたしも今日のパーティー楽しかったですし、それに…学校とは違う弥先輩が見れて、嬉しいですし…」
弥先輩が気にしてくれてるから、大丈夫だってちゃんと伝えなきゃ。
そう思うも、きちんと伝えられていないのは、この空間と距離の近さのせい。
静かなパーティー会場で二人きり、それもこんな風に抱き締められて、頭がクラクラしてくる。
なんか夢みたいだ。
王子様と過ごすロマンチックな一時…女の子なら誰でも一度は憧れるシチュエーションを、あたしは今体験している。
世界で一番好きな人と。



