「お話してただけって…」
「本当にお話してただけだもん!」
絵恋さんが弥先輩のすぐ後ろで言い、あたしと目を合わせる。
お話してただけ。
絵恋さんは…弥先輩が心配だっただけ。
「それなら他人から見て穏やかに話してよ…。
こっちがどれだけ心配したと思っているんだ。
華羅も相当焦ってたし、僕だって…」
言葉を続ける前に、弥先輩は後ろを振り返る。
「絵恋、先に帰っていなさい。」
「弥にぃは?」
「沙羅ちゃんを家に送ってから帰る。」
「…分かった。
その前に一つだけ!」
絵恋さんが弥先輩とあたしの間に立つ。
「沙羅さん、今度はゆっくりお茶しながらお話ししてくださいませんか?
美味しい紅茶を用意しときますから。
あと、来年からあたし、沙羅さんの生徒会の後輩になるんで、よろしくお願いいたします。
それと…」
「絵恋、一つと言ってなかったか?」
「あと一つだけ!
沙羅さん、これから弥にぃと付き合ってたら、何があるか分からないです。
でも、沙羅さんなら絶対に乗り越えられると思います。
もし何か困った事があれば、私も全力で力になりたいと思います。
だから…弥にぃのこと、よろしくお願いいたします。
それでは、今日はありがとうございました。
ごきげんよう。」
絵恋さんはそう言って、ニコッと笑うと、あたしに紙を渡す。
絵恋さんの連絡先だった。
「ありがとう。」
「いえ。
では、私はこれで。」
絵恋さんは先程乗っていた車に乗り込む。
車はすぐに発射し、そこは弥先輩の家の車と、弥先輩とあたしだけになった。



