「沙羅ちゃん!華羅!」


柱を床に置いた弥先輩が、こちらへやって来る。


華羅お姉ちゃんの背中を見た瞬間、弥先輩の顔が歪んだ。


聖也先輩がある程度落としてくれたものの、まだその背には細かい破片が沢山付いていて、血もさっきより広がっていた。


「沙羅ちゃん、怪我は?」


「あたしは…大丈夫です。
ちょっと背中打っただけで。」


「背中打ったなら、沙羅ちゃんも一度保健室で見てもらった方がいいですね。
華羅は…蛇持先生に来てもらってからの方が良さそうですね。」


「ああ。
誰か呼びに行ってるのか?」


いつも以上に低い聖也先輩の声音が、事の重大さを強調する。


「勇也が走っていきましたから、もうじき来るはずです。」


「…」


先輩や光唆は、自分に出来る事を必死にやっている。


でもあたしは何も出来なかった。


もう何をしたらいいのか分からなくなって、ただただ状況を見聞きしていた。