そんな私の不安は、あっと言う間に吹き飛ばされた。統一郎はすごく私を楽しませてくれて、私もすごく楽しくて…他の人から見たら付き合ってるように見えるかな?
お互いの服とか見立て合ったり、それは似合わないって笑ったり…ランチも半分こしたりしてすごく楽しくて、あっと言う間に日が暮れかけてた。

帰る前に家の近くの公園に寄った。

「何か飲むか?」
「あ…私買ってくる。お礼代わりに」
「頼む」

暖かいのがカップの自販機しかなくて私にはアイスココア、統一郎にホットのカフェオレ。両手に紙コップを持って歩き出すと、ベンチで待ってた統一郎の隣には綺麗な子……。

「…用はねぇだろ、俺の邪魔すんじゃねぇ」
「今日は私だったじゃない」
「決めた覚えはねぇな」
「私たちはね?岸田君と付き合う為の暗黙のルールがあるの。家に押し掛けない、名前を呼び捨てにしない、嫉妬しない…ってね」
「ご苦労だな」

そんなルールがあるなんて、初めて知った。女の子同士で取り合わないようにお互いに見張りあってるみたいな…。

「きちんと守ってるんだから報われたいわ」
「知るかよ」
「最近よく二年の橘さんを構ってるらしいじゃない?あんな子供っぽい子がいいの?ロリコンの気があるわけ?」
「アイツは一つ下なだけだろ」
「あんな子供に構うの止めなさいよ、疲れるだけじゃない」
「俺の勝手だ」
「まぁあんなタイプは面倒臭がられて、ヤリ捨てられるのがオチね」
「っ…黙れ」
「珍しい…岸田君が怒るなんて……あら?」

その人が私に気付いて近付いてきた。

「このショップのワンピなんてお子様には似合わないの。しかも岸田君はブラックしか飲まないの…知らなかったの?」
「っ、あ……!?」
「ほのか!」

ココアとカフェオレが真っ白なワンピースに染み込んでいく…。

「あ~勿体ない」
「テメェっ」

みっともなくて…悲しくて、私は走り出した。部屋に駆け込んで、ベランダの鍵を確認してカーテンもきちんと閉めた。

何で?どうして私がこんな事されなきゃいけないの!?

「っ…今日、おろしたばっかりなのに…」

ベランダの窓が何度も叩かれたけど、ベッドに潜り込んで聞こえない振りをした。お母さんに呼ばれても寝た振りで無視して、部屋からも出なかった。

一時間とか三十分置きくらいに統一郎はベランダに来た。でも無視し続けた。


私は好き…でも統一郎は妹くらいにしか思ってないかもしれない。だから優しくしてくれるだけ。
それでも……やっぱり私は――。