「ゆ、結城さ…ひゃっ!?」

結城さんの舌が耳のふちをなぞるように這う。



油断した。

絶対卵関係ない!!

もともと耳が弱い私。
思わず変な声が漏れて、死ぬほど恥ずかしい。


「ぃや、だ……離してっ」

抗議しても結城さんは離してくれない。

いつの間にか頭と腰にガッチリ腕が回ってて、
私の力じゃ、びくともしなかった。



こうなったら……

隙をついてみぞおちに拳を叩き込むしかない!


テーブルの下でこっそり手を握り、力を込める。

結城さんのみぞおちに照準を合わせ、あとは勢いよく放つだけ!




ドカッ




結城さんがテーブルに撃沈する。



……………あ、

いや、今のは私じゃないよ!?

私に男の人を沈めるだけの力は無いもん。


確かにあと少しで私の拳はみぞおちに届いた。

でもそれよりも早く、何かが結城さんの頭を直撃したのだ。


「ったく……朝から盛ってんじゃねーぞ、このタラシが!」

結斗くんが冷たい目で結城さんを睨む。



本当は足をテーブルの上に乗せてるのが気になるけど……

床にさっきまで食卓の中央にあった醤油のビンが転がっているのを見て、助けてくれたのは彼だと悟る。

だから注意はしないでおこう。


まぁ本来、人に物を投げつけるっていう行為もほめられたものじゃないけどね。

よいこはまねしちゃダメだよ。