「あ、起きた。」
眠りから覚めて目を開けるとどアップで人の顔。
「う、ん…誰…」
ぼんやりした頭で焦点を合わせた。
「え、お母さん!?」
「遅い、実の母を思い出すのにそんな時間かかる!?全く。しかも第一声が“誰”って…お母さん泣きたいわ〜…」
そう言って心底残念そうな顔した私のお母さん。
「って、なんでいるの。」
「えー。お母さんが来ちゃダメなの?いいでしょ、ね?それに今日検査の日だからさ♪」
「いや、全く理由がわからない。」
「紗葉が逃げ出したら困るでしょ〜。」
…私、どれだけそのネタ引っ張られるのか。
「もう逃げないよ。」
「そうね、紗葉はもう高校生だもんね。」
てへっなんて笑うお母さん。
昔からお母さんは明るい性格。
「あ、そうそう。私が来た時、男の子が病室の前でなにか考え込んでたわよ。なんだっけ、しい…な…まこと君だっけ?病室、お隣なんですってね。」
「え、彼が!?」
「ええ、そうよ。なんかすっごくためらってたみたい。お隣の病室からたくさん声がしたからお友達も一緒だったんじゃないかしら。」
「それで、どうしたの!?」
「なにそんな慌ててるのよ。いや、紗葉に用事みたいだったからさ、病室入れたんだけど紗葉寝てたから少しだけ私とお話しして帰っちゃったわよ。」
「…なに話したの。」
「はは、ちょっと雑談よ。彼、いい子ね〜。」
若いっていいわ〜なんて笑ってるお母さん。
今日、橘田先生に言われたことお母さんにいったらどんな顔するのかな。
大丈夫って泣きながら笑うのかな。
ごめんね、お母さん。親不孝で。
「…今何時?」
「ん、今は…夜の6時?」
…私結構寝てたのか。


